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「新卒採用等級号数はみだりに変えて運用してはいけません」

 責任等級制賃金制度の賃金テーブル(本給月額表)は、新規学卒者初任給として以下の「採用等級号数」を適用するという前提で設計されています。
 
【55566モデル】
 中卒Ⅰ等級1号、高卒Ⅰ等級16号、短大卒Ⅱ等級2号、大卒Ⅱ等級12号
【45567モデル】
 中卒Ⅰ等級1号、高卒Ⅰ等級16号、短大卒Ⅱ等級7号、大卒Ⅱ等級17号
 ※基幹業務採用の場合
 
 採用等級号数は、オールAモデル線上の各学卒年齢に対応した号数となっています。このオールAモデル線とは、毎年A評語を取り続ける優秀な人材がたどる「昇給の軌跡(線)」のことです。
 
 ご存じのとおり、採用初任給相場は、大卒を中心に年々上昇し続けています。初任給相場の高騰にはベースアップ(加給)で対応すべきものですが、直近の学卒入社者に限定すれば初任給調整手当の支給で対応することも可能です。
 
 ところが、初任給の上昇ペースに追い付けないため、ベースアップや初任給調整手当によらず、「10号上のⅡ等級22号が21万円だから、今年はその等級号数で採用しよう」などと採用等級号数そのものを引き上げて運用している企業を見かけます。しかし、このような方法は絶対にしてはいけません。
 
 <採用等級号数を引き上げてはいけない3つの理由>
 1.先輩社員とのバランスが崩れる
    入社時は同じスタートラインから始まって、入社後の評価の積み重ねによって
   先輩と後輩の賃金が逆転するのであれば、誰も文句を言いません。しかし、入社
   したばかりの時点で逆転してしまっては、組織の秩序は保てません。
    また、スタートラインが違うのですから、その後の昇格・昇進の場面において
   も不公平感を与えかねません。
 
 2.オールAモデル以上の賃金水準で昇給し続ける
    採用等級号数を引き上げるということは、オールAモデル線よりも高い等級号
   数で採用するということです。採用等級号数を引き上げて採用してしまうと、入
   社後も引き続き、優秀社員より高い水準のまま昇給し続けることになります。
 
 3.賞与や退職金に影響を及ぼす
    月例給与のほか、基本給を算定基礎とする賞与や退職金などにも影響が及びま
   す。特に退職金は金額が大きく、退職給付債務にまで関係してきます。全社員の
   基本給水準が上がるのであれば、退職金の算定式に調整係数を組み入れることで
   対応できますが、毎年のように採用等級号数を変更してしまっては、合理的な調
   整など不可能です。
 
 このように、安易に採用等級号数を引き上げてしまうと、昇給や賞与、昇格昇進、退職金に至るまで、中長期にわたる様々な賃金処遇においてバランスを欠くことに繋がります。初任給調整手当では対応が難しいほどに自社の採用金額と初任給相場が乖離しているようであれば、自社の賃金水準が世間水準よりもかなり低い可能性が高く、抜本的な賃金体系の見直しが必要と考えられます。その場合は担当コンサルタントまでご相談ください。
 チーフコンサルタント 高橋 智之

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