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「ベースアップの進め方の基本」

 2022年の連合による春季労使交渉の妥結結果を見る限りでは、現時点での賃上げ率は2%を超え、中小企業も含めて昨年同時期を上回っているようです。コロナの感染拡大、原油高、原材料の高騰、円安の影響など、いまだ不透明な経営環境が続いてはいますが、私どもに寄せられる相談内容をみても、「これからも新卒社員を積極的に採用したい」、「ここまで育ててきた若手社員をしっかり定着させたい」などの理由から、ベースアップや採用初任給の引き上げに積極的に取り組まれている会社が増えていることが判ります。
 
 ベースアップとは、賃金表(ベース)の水準を引き上げること、言い換えれば自社賃金表の競争力を高めることでもあります。自社の基本給水準に対する考え方は、世間相場とのバランス、企業の収益力、消費者物価の上昇などによって影響を受けます。
 
 【ベースアップの3つの目的】
  • 世間相場に対する自社賃金水準の戦略的決定
  • 物価上昇による購買力低下に対する補填、生活水準の維持向上
  • 会社業績向上に伴う賃金への配分
 
 では、実際には、どのようにベースアップを行なえばよいのでしょうか?
 ベースアップのやり方は大きく分けて2通りあります。現在の賃金カーブに一定額を加算して均等に引き上げる「定額ベア」と、一定の率を乗じて賃金カーブの勾配を急にする「定率ベア」です。
 
 2022年4月(ベースアップの進め方の基本)
 
 後は、この2つの組み合わせによって様々なバリエーションが生み出されることになります。例えば、若手社員の賃金を中心に引き上げつつ、管理職クラスを据え置きたい場合には「定額アップ+定率ダウン」とします。65歳定年を見据えて賃金カーブを抑制しつつ、採用初任給を引き上げたい会社などがこれにあたります。一方で、職責の重さの割に管理職賃金が低い中小企業では、賃金カーブの勾配を大きくするために「定額ダウン+定率アップ」とすることもあります。
 
 いずれの場合も、実在者の賃金分布など自社の現況を正しく把握し、中期的な人事戦略に沿って、今後の方向性を定めることが大切です。
所長 大槻 幸雄

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