2023年、新しい年も人材獲得競争はいっそう厳しさを増していくことでしょう。
我が社にとって必要な人材を獲得し続けるためには、新規学卒者の採用、中途採用の充実、女性社員の活躍推進、定年後再雇用等のシニア社員の活用、外国人従業員の活用など、自社に合った幅広い採用戦略を展開することがますます重要になることでしょう。
しかし、社外からのシニア採用については、そもそも選択肢の中にないという会社も存外多いようです。特に中小企業では、特定の職種・業種を除いて、社外からのシニア社員採用が積極的に行われないというより、かえって大企業からのシニア採用を敬遠する傾向が強いようにも感じます。取引先銀行の支店長経験者を総務部長として招聘したり、建設・不動産業でプロジェクトマネジメントや不動産取引に長けた大手の経験者を管理職としてスカウトしたりするなどの例外はあるものの、これらはごく限定的なケースだといって良いでしょう。
よく取り上げられるあるある話の中に、「大企業の部長職が早期退職の後に、中小企業での採用面接に臨んだ際に、『あなたは何ができますか?』という面接官の問いかけに、『部長ができます』と答えた」というのがあります。これは多かれ少なかれ創作された話のようですが、「大企業で管理職経験があるからといって、中小企業であるわが社に入社しても、自尊心ばかり高くて周りに溶け込めないのではないか」とか、「柔軟性を欠いた人を採るくらいなら、もっと若い世代をと採ったほうが会社のためでは?」と考える経営者は多いようです。実際に中小企業のオーナー社長から「大企業とはいっても畑違いの業種からきても、すぐにウチの仕事ができるとは思えない」との声を聞いたこともあります。
しかし、大手企業に採用されて、真面目に定年まで勤め上げた社員の中に、中小企業というステージでも十分に活躍できる人はたくさんいます。そうした人の中には、「このまま嘱託再雇用で残るのは、給料が下がるのはともかく、まだまだ働けるのに責任の伴わない、かつての部下の支援がメインじゃ働きがいがない」「給料は高くなくても、自分の知識や経験を活かし、会社の成長が実感できるような新しい職場で働きたい」と考える人も現に存在します。
定年までに相応の蓄えもあり、年金に対する心配もないシニアの中に、「手ごたえの得られない仕事を続けるより、新しい環境で純粋に働きがいが実感できる仕事がしたい」という人がいるのもうなずける話です。こうした人たちの採用をもっと前向きに考えても良いのではないでしょうか。
彼らの多くには広い視野、課題抽出力、論理的思考、本質を見抜く力等が備わっています。すなわち、基礎的なマネジメント力を備えた人財であり、会社や業種が違っても短時間で適応できる力を持ち合わせているということです。もちろん大企業の管理職経験者にも、マネジメント力に乏しい人はいますので、そこはしっかり見極めなければなりませんが…。
自社で育てた社員(プロパー社員)を然るべき責任あるポストに就けるように組織マネジメントを進めることが基本路線ではありますが、いま「管理職が育っていない」「本当の意味でマネジメントの出来る人材が足りない」という状況があるのならば、社外からのシニア採用も、有効な選択肢の1つです。最初からあきらめてしまわずに、前向きに検討してみてはいかがでしょうか?
なお、このようなターゲット層に対しては、公募のほかにいわゆるリファラル採用(社内外の人脈を介した採用)が向いているといえましょう。ただ、どなたかに紹介された方だとしても、その人物をしっかり見極めたうえで迎え入れるかどうかを判断しなければならないのは、言うまでもありません。
所長 大槻 幸雄