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「人事採用の基本スタンスと高騰する新卒初任給への対処法」

 本日、3月1日より、2024年卒採用が本格的にスタートしました。
 既に先行して動いている企業もあるようですが、政府・経団連の定める就活解禁日が3月1日であり、ナビサイトでの情報公開もそれ合わせて開始されますので、今日が初日と考えて良いでしょう。
 今年の春季労使交渉では、一部の大手企業による、連合要求の5%を上回るような大幅な賃上げが注目を集めていますが、新規学卒者(大卒)の初任給についても大幅な引き上げを図る会社も新聞紙面を賑わせています。
・三井住友銀行 :205,000円 から 255,000円へ(5万円アップ)
・ファーストリテイリング :255,000円 から 300,000円へ(4万5千円アップ)
・NTTグループ :219,000円 から 250,000円へ(3万1千円アップ)
 専門スキルを備えた人材獲得に意欲的な会社のほか、ひっ迫する採用市場において初任給を一気に引き上げることで、応募者を確保しようという動きが広がっているのでしょう。
 ただし、このような動きは今のところ大手企業の一部に留まっていますし、中小企業にまで直ちに広がることはないでしょう。なぜなら、採用初任給を引き上げる局面では、その年の新入社員のみならず、先に入社している先輩社員との給料のバランス調整を図る必要があり、30~32歳程度までの年次間の賃金バランスを崩さないためには、かなりまとまった調整原資が必要となるからです。
 多くの中小企業にとって、初任給の「値上げ競争」の中で戦っても勝ち目はありません。では、どうすれば良いでしょうか? 
 採用過程をお見合いに例える人がいますが、正社員という長期雇用の枠組みの中で採用する以上、まずは自社をよく知ってもらうことです。自社のHPやナビサイトにおいて、経営理念やパーパスを明示し、自社の存在意義や企業活動の目的を分かりやすく伝えることも重要です。就活生にも、社会貢献が実感できる仕事に就きたいという人は数多くいます。そして、SDGsへの取り組みや社会貢献などに関心を寄せ、ダイバーシティへの姿勢、女性活躍推進への取り組みなどにも注目しています。
 近年の新入社員意識調査を見ると、スキルや知識を身に着けたいという意識はあるものの、「定年まで現在の会社で勤めたい」人は全体の1割強、「どちらかといえば定年まで勤めたい」と合わせても3割に過ぎません。VUCA時代の新入社員は、「自身の成長のためにどんな職務経験ができるか」、「キャリアアップが期待できる会社なのか」、「身に着けた知識やスキルが自身の資産となりうるか」などについて、思いのほか冷静に受け止めているようにも見えます。
 こうした世代に対して、どんなメッセージが有効なのでしょうか?
 私たちは、日中の活動時間の大半を仕事に従事して過ごしています。毎日、頭も身体も活発に働かせることのできるメインの時間帯に仕事をしているのですから、その仕事自体にやりがいがあり、仕事時間が充実していることが、働く者の幸せに直結していることはいうまでもありません。
 社員がいつも活き活きと働いていて、社会への貢献が世間の目にも明らかであり、さらに社員が「働きたい」、「学びたい」、「経験したい」と願った時にそれに応えてくれる仕組みや制度のある会社は、これからも採用に強い会社であり続けるでしょう。賃金水準が特別に高くはなくても(もちろん“世間並み”の水準は必要ですが)、いい会社には自ずと人材が集まってきます。
 自社の強みを今一度確認して、分かりやすい言葉でこれを伝えていただくことで、優秀な人材の獲得へと繋げていただきたいものです。
所長 大槻 幸雄

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