専門職とは、文字通り専門技能を有するスペシャリストのことです。
会社の中には、ライン職制から外れるものの、一定の裁量権を持って高度な専門分野や特命事項を担当する専門職が置かれることがあります。部下を持たずとも責任が重く難易度の高い仕事を担う社員であり、研究開発職や特殊技術の有資格者だけでなく、ノウハウ・知的財産の管理など、高度な専門性が問われる分野は数多くあります。こうした専門職の等級格付や給与はどのように取り扱えば良いでしょうか。
等級制度を会社の中での責任の重さや求められる仕事や成果の難易度(=重要度)を基準にして構成すれば、ライン職制と専門職の等級を無理に切り離して考える必要はありません。専門職もライン職制と同じように責任の重さの段階に応じて等級を決めればよく、専門職はライン職制より必ず下位に置くとか、同等に格付けるなどとあらかじめ決めてしまうのは間違いです。
等級格付は職制の違いにかかわらず、あくまでもその職務の責任レベルよって判断すべきものです。また、収益や組織への貢献度も考慮する必要があります。ライン職制が「担当部門の業績責任を果たす」「部下の指導育成を行う」といったマネジメント面での責任を担うのに対して、専門職は実務面で高い成果を出して会社に貢献する責任を担うという職務の違いこそありますが、期待される組織への貢献度の大きさが同じであれば、両者を同じ等級に格付けるのが適切です。ライン職制と専門職を同じ等級制度の中で格付けすることにより、社内に一体感や良い緊張感が生まれて、競争原理を根付かせる効果も期待できます。必要に応じた相互間の人事異動も行いやすくなるでしょう。
同じことは給与についても言えます。専門職をライン職制と同じ等級制度の中で格付けるならば、基本給表も同じものを適用するのが自然です。業務内容が異なるとは言え、収益や組織への貢献度については同じ水準を期待するのであれば、
専門職用の基本給表を別に用意する必要はありません。
もちろん、ライン職制と専門職の役割責任が明らかに異なっているという会社もあるでしょう。そうした場合には、社内の実態に応じて専門職用の等級や基本給表を別に用意することも選択肢の一つです。しかし、安易に専門職用の別テー
ブルを作ってしまうと、年功で昇格した部下なし管理職など本来の専門職の主旨から外れた社員の逃げ場になりやすいので注意が必要です。
ライン職制の管理職と専門職を同じ等級に格付けるとしても、職務内容が異なりますので、評価シートは別のものを用意することになります。専門職用の評価シートであれば、専門職としての具体的な個人目標を定め、その達成度を成果として評価します。この時、成果のウエイトは評価点全体の50%程度を占めるよう設定すると良いでしょう。
ライン職制の管理職は部門業績だけでなく、部下の指導育成や勤怠管理などマネジメント業務全般が評価対象となりますが、専門職は実務面での高い貢献度を期待されて相応の等級に格付けられるのですから、担当する具体的な専門業務を
主な評価対象とし、成果に重点をおいた評価点の計算方法として、成果と報酬が密接に連動する仕組みを用意しておく必要があります。
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