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「特別昇給を活用した凸凹(デコボコ)調整」

 今日から4月。多くの会社では当月が給与改定の時期となります。
 給与改定(=賃上げ)の中心となるのが定期昇給とベアですが、基本給の増額改定を長期間にわたって安定的に行うために必要不可欠なのが定期昇給です。
 労働契約期間の定めがない正社員(無期雇用)にとって、定期昇給とは将来の自分自身の賃金がどのように上昇していくかを指し示すものなのです。
 定期昇給の本質は、評価によって昇給額に差がつく「実力昇給」にあります。これは査定昇給とも呼ばれるように、今後一年間に支給される基本給額を決定するものである以上、会社は過去の働きぶりから向こう1年間の発揮能力への期待度を見極め、昇給金額に反映させることで社員のモチベーションを高めていかなければなりません。
 さて、定期昇給とは「毎年定められた時期に、予め定められた自社のルールに沿って昇給を行なうこと」なのですが、社員にとって公平感ある運用であるための大前提として、中途採用者や有期雇用から正社員へ登用された方も含めて、全社員の適正な基本給バランスが維持されていることが重要な要素です。
 これは、いわゆる凸凹調整の問題として捉え直すことができます。
 実際に、中途採用者やパートから正社員に登用された方などの基本給が、新卒採用のプロパー社員よりかなり低い水準で推移しているという事例が、まだまだ多くの中小企業で見受けられるのです。
 確かに、「ある程度の年齢に達している応募者であっても、その仕事の未経験者であれば既存社員と同じ給与を出すわけにはいきませんし、他社で十分な実績がある経験者だとしても、ひとたび高い給与で採用すると、入社後に期待外れであったことが分かっても簡単に金額を下げられませんから、基本給の水準は慎重に決めています。」という社長や人事担当の想いはよく理解できます。
 しかし、スカウト採用という言葉があるように、異業種からの“異能”を求めて自社の幹部ポストに優秀人材を登用するケースも、様々な業種で行われています。はたして、「中途採用だから」、「この業界が初めてだから」という理由のみで、基本給を低いままに据え置いているのは正しいのでしょうか。
 社会人としての基礎力を有する中途採用者は、3年程度で既存社員と変わらない水準にまで成長するでしょうし、入社時に多少の不安があったとしても入社後に実力を証明した者もいるはずです。そのような社員に対しては、特別昇給の条項を設け、経営判断で特別昇給を行えるようにすることが重要です。
 凸凹調整の本旨は、「差があるものはその差を認め、差のないものは同じに扱う」というところにあります。これは同一労働同一賃金の要請にも沿った考え方だといえましょう。
 皆さんの会社にも、既存社員とのバランス等から給与を低めに抑えて採用した中途採用者がいる場合には、この機会に見直しを図り、入社後の評価に応じた特別昇給を行って、適正な水準まで基本給を引き上げるようにしてください。
所長 大槻 幸雄

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