中小企業の強みは、事業規模が小さいが故のフットワークの軽さや機動力にあると考えられます。にもかかわらず、等級制度と賃金制度が、実質的に身分資格化された年功賃金となっている会社ではこの機動力が活かされず、組織も硬直化しやすいため早急に改める必要があります。
年功的な身分資格が温存される要因として職能資格制度があります。職務遂行能力を客観的に測定できるのであれば問題ないのでしょうが、職務遂行能力を謳いながらも、その判断においては年功要素(年齢・学歴・勤続)を代用基準としがちなことから、実際は緻密に制度化された序列資格階層構造に陥りやすいものです。
合理的な賃金制度実現のためには、賃金と仕事のミスマッチを回避し、生産性に直結した処遇実現に向けて、仕事ベースの等級制度を構築することが何よりも大切になります。
仕事上の責任区分を切り口として、全ての社員が分かるように説明できる賃金制度へと作り替えていくにあたって、その屋台骨となるのが仕事基準の等級制度です。ここでは実際の責任等級制度のサンプルを取りあげて、その概要を説明しましょう。
責任等級とは「仕事の質」、すなわち仕事の責任の重さと仕事の難しさの度合いで等級をまとめ、区分したものです。個々の社員の裁量で遂行できる業務範囲(=責任範囲、仕事の間口の広さ)を責任の大きさの段階として整理し、会社ごとの基準に従って区分したものを責任等級制と呼んでいます。等級ごとの責任の重さのイメージを図示すると、次のように表示することができます。
等 級 階 層 職位 職制上の責任レベル(イメージ)
1等級 定 型 職 比較的短期間に習得できる定型的な仕事
2等級 担 当 職 一定の範囲で常識的な判断を要する仕事
3等級 上 級 職 専門的な判断を伴う裁量を要する仕事
4等級 監 督 職 係長 チームをまとめ課題を遂行する責任を負う仕事
5等級 一般管理職 課長 課の目標と戦術を立て遂行管理する責任を負う仕事
6等級 上級管理職 部長 部門運営全般に対する最終責任を負う仕事
個々の社員の等級を決定することを等級格付と呼びますが、責任等級制ではあくまでもその社員に任せる仕事の責任レベルで等級が決定されることに注意してください。本人の保有能力や実績から判断される資格階層の下での等級格付とは異なり、会社が実際に任せている仕事の責任範囲ベースで何等級になるかが決まるため、等級格付けは経営判断に基づいて客観的に決定されることになります。(続く)
所長 大槻 幸雄