最低賃金が24年度は50円引き上げられることが確実視されています。大幅な賃金水準の底上げに対処するには、ベースとなる堅固な賃金表を持つことが不可欠です。
ただし、これは決して難しいことではありません。前回とりあげた責任等級ごとに、その責任レベルに相応しい基本給水準を設定すれば、合理的な賃金決定ができるようになるのです。今回は賃金表の基本構造をおさらいしてみましょう。
責任等級別にその仕事に対する基本給額を定めたものが基本給表です。ここで紹介するのは1号当たりの差額(以下、号差金額)が等級ごとに一定額に設定される等差号俸制と呼ばれるタイプのものです。責任等級別に基本給のレンジ(下限―上限の範囲)を定め、その範囲内での習熟による昇給を行っていこうというもので、中小企業においては社員に対する中長期的なインセンティブ効果が期待できるうえ、社員の将来不安を解消しやすいこともあって、多くの企業で採用されている賃金表のタイプだといえるでしょう。昇格によって等級が上がれば、基本給の上限額が上に伸びるだけでなく、号差金額が大きくなるので昇給額も上昇します。
中小企業では、賃金制度が社員にとって分かりやすいものでなければいけません。そうでなければ、社員が安心感をもって働き長く定着するという効果は期待できなくなってしまいます。その点では、等級ごとに、それぞれのスタートとなる金額と等級別の号差金額を決定して設定される「責任等級制」賃金表の構成はいたってシンプルで分かりやすいものと言えましょう。
「本給月額表」と呼ばれるものがこの賃金表であり、給与規程上で公開することが基本です。(ここではⅢ等級までを掲載。20号以上は10号刻みで表示しています。)
正規従業員の基本給月額に合わせて、時給換算の金額(1ヵ月の所定労働時間160時間の場合)を併記していますので、これによって正規従業員と同等の仕事をしている有期雇用社員がいる場合には、その時給(=同一賃金)の目安が分かるようにしています。
このような処遇決定上の体制を整えておくことも、公平な賃金制度の実現に向けての大切な要素となっています。次回にお話する昇給運用ルールと合わせて、実力主義の賃金制度が確立することになります。(続く)
所長 大槻 幸雄