今年の最低賃金が発表され、全国平均1,055円(前年比51円引上げ)となりました。中央最低賃金審議会が示した目安の引上げ額は50円でしたが、その後、各都道府県で審議した結果、徳島県の84円の大幅引上げを筆頭に、合計27県で目安の50円を上回る引上げ額となりました。また、最低賃金が1,000円以上となったところは、前年から倍増し、合計16都道府県となりました。(各都道府県の改定額は、厚生労働省の下記リンクをご覧ください)
厚生労働省「すべての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」
※リンク先にあります「PDF(別紙)令和6年度地域別最低賃金額答申状況」をダウンロードしてください
過半数を超える県で目安を超える引上げとなった背景には、地域間のし烈な人材獲得競争があります。地方においては、東京などの大都市圏に限らず、近隣他県も含め、人材流出防止のため周辺より1円でも上回ろうと苦闘した結果だと言えるでしょう。
ところで、毎年この時期になると「賃金のうち、どこまで(どの手当まで)が最低賃金の対象に含まれるのか?」というお問い合わせを受けますが、最低賃金法により、対象とならない賃金は決まっています。
◆最低賃金の対象とならない賃金
(1)精皆勤手当
(2)通勤手当
(3)家族手当
(4)所定労働時間を超える時間の労働に対する賃金(時間外割増賃金など)
(5)所定労働日以外の労働に対する賃金(休日割増賃金など)
(6)深夜労働に対する賃金(深夜割増賃金など)
(7)臨時に支払われる賃金(結婚祝い金など)
(8)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
まれに「固定みなし時間外勤務手当は、実際の残業の有無にかかわらず支給しているのだから、最低賃金の対象に含めてよいのではないか?」とのご質問を受けます。しかし、当該手当はあくまでも時間外割増賃金であり、一定程度の金額を毎月固定払いしているだけですので、最低賃金の対象とはなりません。
また、上記が対象外となる賃金ですので、反対に言うと、上記以外は最低賃金の対象に含めて計算することになります。このとき、「『割増賃金の』算定基礎から除外できる賃金」と混同し、最低賃金の計算を誤ってしまうことがあります。
《参考》割増賃金の基礎となる賃金から除外できる賃金
1.家族手当
2.通勤手当
3.別居手当(単身赴任手当)
4.子女教育手当
5.住宅手当
6.臨時に支払われた賃金(結婚祝い金など)
7.1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
したがって、『割増賃金の』算定基礎から除外できる賃金のうち、別居手当(単身赴任手当)、子女教育手当、住宅手当は『最低賃金の』計算に含めることになりますのでご注意ください。
このように、最低賃金の計算上は様々な手当を含めることができるとはいえ、賃金の根幹をなすのは基本給です。最低賃金をクリアしたいがために、無秩序に手当を設けて支給してしまうと、整合性が取れなくなり、いずれ賃金制度の崩壊を招くことになります。
そうならないためにも、基本給で最低賃金をまかなえるよう、定期的に賃金水準の見直しを図っていきましょう。
チーフコンサルタント 髙橋 智之