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「残業の抑制に向けて(時間管理の再確認)」

 賃金制度との関係で何かと問題になるのが残業管理の問題です。コロナ問題が落ち着きを見せ始めるなか、経済の回復基調を受けて、師走にかけて繁忙期を迎える会社も多いこととでしょう。今回は改めて、労働時間管理と(時間外)勤務手当(=残業手当)の関係について、考えてみたいと思います。
 
 労働時間管理は、働き方改革の大きな柱の1つでしたが、すべての基本は1日8時間、週40時間の法定労働時間にあります。その例外措置として、「1日8時間を超える日があっても週平均40時間以内に収まっていれば超過勤務として扱わない」変形労働時間制がありますし、事業場外労働や裁量労働に対するみなし労働時間制も法定労働時間の例外措置として捉えることができます。
 
 最初に、法定労働時間を、実際の働かせ方との関係で見てみましょう。
 
 所定労働時間が1日8時間の会社では、週5日働けば40時間に達してしまいますから、完全週休2日にしなければ法定時間内に収まりません。これが、1日6.5時間勤務なら週6日勤務しても6.5時間×6日=39時間 となり40時間以内に収まります。
 
 休日は、少なくとも週に1日は与えなくてはいけませんから、週6日勤務まではできるのですが、6日勤務の場合の労働時間は1日あたり最長6時間40分までは週40時間の範囲で勤務できることとなります。
 
 1日の所定労働時間を越えて勤務させるのが、時間外勤務=残業です。なお、従業員に残業をさせる場合には、予め労働組合か従業員の過半数代表との間で、時間外勤務と休日勤務に関する協定(労働基準法第36条に規定されていることから、一般に「36協定」と呼ばれています。)を結んで、労働基準監督署に提出しなければなりません。
 
 法定労働時間を超えて残業をさせた場合の割増賃金の割増率は、時間外勤務の場合25%以上(ただし、1ヵ月60時間を超える時間外勤務をさせた場合、60時間を超える分については50%以上です。中小企業は2023年4月より適用)、深夜勤務(22時~翌5時)の場合25%以上、法定休日に勤務させた場合35%以上と規定されています。
 
 ここで時間外勤務(残業)の本質を今一度確認しておきましょう。
 
 時間外勤務は、本来は、所定労働時間を超えて勤務するよう会社が残業命令を行うことで生じます。実際には、多くの職場で本人からの自己申請により残業を認めるケースが多くあるのですが、社員の申告に任せきりですと残業手当を稼ぐためにだらだら残業をするような社員が出てこないとも限りません。これをコントロールすることこそ、本来の管理監督職の役割です。
 
 時間外労働に対する25%以上の割増賃金は、人件費負担として大きく跳ね返ってきますが(ちなみに欧米では平日は5割以上、土日祝日だと100%の割増が求められる国が多い。)、言い換えれば、会社および会社と立場を一にする管理職は、所定労働時間内に集中して生産性を高め、残業外勤務を常にコントロールできるように常に考えておく必要があるということでしょう。コロナ禍の下でスマホによる勤怠管理やウェブ会議ツールなどが普及し、合理的な時間の使い方や生産性への意識が高まってきています。年末の繁忙期を理由に、ムダやムラのある働き方に戻ることのないようにしたいものです。
所長 大槻 幸雄

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