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「地域手当の適切な設定方法」

 大都市と地方では賃金水準に大きな差があり、特に東京を中心した首都圏では他の地域より数万円も高くなっているのが実態です。国内各地に事業所を構えている会社では地域手当で賃金の地域格差に対応しているところが多いと思いますが、適切な地域手当の決め方はどのようなものでしょうか。
 会社によって事情が異なりますから、単純には申し上げられませんが、
東京 : 1・2等級:20,000円、3等級:25,000円、4等級:30,000円・・・
大阪 : 1・2等級:15,000円、3等級:20,000円、4等級:25,000円・・・
のように「地域別・等級別」に定額で支給する方法が良いでしょう。
  その理由は、賃金水準の地域差には単純な金額差だけでなく、下記のような賃金の上がり方の差もあるためです。
【地域による賃金カーブの差(イメージ)】
画像1
 たとえば、本社が北海道、営業所が東京にある場合を考えてみましょう。
 賃金管理研究所が毎年発行している「全国都道府県別モデル本給表」では、北海道と東京の号差金額(※1)には次のような違いがあります。
【2022年度 中位水準(※2)として】
 北海道 : 1等級 1,070円、2等級 1,340円 ・・・
 東 京 : 1等級 1,280円、2等級 1,600円 ・・・
 こうした号差金額の違いに加えて、新卒初任給も東京の方が高いという単純な金額差もあるため、40歳で係長または小規模企業の課長程度に昇格する高卒採用者の基本給モデルでは、年齢により次のような差が生じます。
20歳: 北海道 179,800円 / 東京 199,000円  =  差額 19,200円
40歳: 北海道 309,900円 / 東京 354,000円  =  差額 44,100円  
 このような採用後の定期昇給や昇格による賃金の上がり方の違いまでを含めた地域差をカバーするには、前述した等級別に定額で支給する方法が適しています。
 一方、「東京:20,000円」「大阪:15,000円」のように地域別の一律額で地域手当を支給する方法はどうでしょうか。この支給方法を採っている会社も多いと思われますが、地域による水準差を十分に埋められていない可能性もあることに注意が必要です。
 例えば地域手当を「東京:一律20,000円」として、先のモデルで比較すると、
20歳 : 北海道 179,800円 + 20,000円 = 199,800円 > 東京199,000円
40歳 : 北海道 309,900円 + 20,000円 = 329,900円 < 東京354,000円
 のように、中堅社員では東京の平均相場に届いていないことが分かります。
これでは競争力のある賃金で若手を採用できたとしても、稼ぎ頭に成長した社員が自社の給与に不満を持ち、次々に他社に引き抜かれていく事態にもなりかねません。
 頻繁な全国転勤が当たり前の会社(※3)では少し事情が異なるでしょうが、社員に同じ地域で長く働いてもらうことを想定している会社であれば、地域手当も事業所があるそれぞれの地域に合わせて賃金水準を細やかに設定できる仕組みが望ましいのです。
(※1)号差金額 = 各等級の定期昇給を運営するための単位で、1号あたりの差額
(※2)中位水準 = 県内主要都市における中堅企業を目安とした水準
(※3)転勤者に対して社宅の提供など住居費用などに配慮している会社が多いと思いますが、地域手当はあくまでも給与水準の地域格差に対処するためのものですから、それらの住宅費補助と切り離して考えるようにします。 
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