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「昇格要件を満たしていない社員を管理職に登用する」

 管理職とは担当部署の業績責任を負うと同時に、格段に広い業務遂行上の裁量を持つ組織の要となるポジションです。真に実力のある者を見極めて管理職に登用することが、強い組織を作り上げるには不可欠となるのですが、ときには社内の昇格要件を満たしていない人材であっても管理職としての職務を任せざるを得ないことがあります。
 そうした場合には、下級の者に管理職の職務を任せるという意味で「心得」として登用します。例えば、現在、4等級で係長の者を「課長心得」に登用する場合、社内の人事管理上は5等級に昇格させずに、4等級のままで5等級の課長の仕事を任せます。
 なお、心得として管理職に登用する場合の人事上の扱いは次のようにします。
(1)基本給と管理職手当
 基本給の金額は変えずに、管理職手当のみ実際の職務内容に合わせた手当を支給します。
 課長心得として実質的に5等級の職務を任せるときは、4等級の基本給のまま、5等級の課長と同額の管理職手当を支給します。ただし、管理職の業務や責任が一部免除されているような場合には、正規の管理職手当の80~90%の金額とすることもあります。
 昇格させずとも、現在の等級のままで上位等級の職務に見合う給与を払う方法を取っておけば、管理職の責務に耐えられなかったなどの理由で役職を外れてもらう場合でも降格人事を避けることができます。
(2)成績評価
 実際に任されている職務内容に合わせて評価を行います。  
 5等級の課長の職務をしているのであれば、人事管理上は4等級であっても、5等級の課長のグループの中で評価を行います。
(3)昇給や賞与額の計算
 人事管理上の等級で計算を行いますが、金額面で不利にならないように配慮します。
 例えば、4等級の者が、課長心得として5等級の中で評価されて標準的な成績である評語Bとなった場合、これを1ランク上の評語Aと読み替えて、4等級の評語Aとして昇給や賞与の計算を行います。つまり、4等級のままでも5等級の評語Bに相当する報酬が得られるようにしておくわけです。
 4等級の評語Aと5等級の評語Bの賞与が同額となるような配分方法であるなど、昇給ピッチの等級間格差や賞与配分のルールが合理的な設定になっていれば、こうした運用が自然と可能になります。
 「心得」を利用することで、経験の浅い人材にも管理職の仕事を早めに任せる柔軟な人材配置が可能となりますし、その仕事ぶりが安定していれば、本人が昇格要件を満たした後に正規の管理職として昇格させる判断を速やかに下すことができます。
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