今回は、目標によるマネジメントについて、育成・評価の観点から考えてみたいと思います。
自社独自の制度として目標管理制度を構築し運用されている場合だけでなく、事業計画を着実に達成するための仕組みとして、組織の階層ごとに又は社員一人ひとりに「目標設定シート」や「チャレンジシート」等を用いて今期の目標と目標達成に向けた行動計画を立てるよう求めることが一般的に広く行われています。しかし、期初に目標設定をした後、期中に十分なスケジュール管理や進捗管理が行われないままに、期末評価の時期を迎えてしまう会社も少なからずあるようです。
「目標によるマネジメント(MBO:Management By
Objectives)」は、もともと組織管理や方針管理を目的とした生産性向上のためのマネジメントシステムとして紹介されましたが、目標達成過程を通じて人材育成や能力開発を促すためのツールとしても位置付けられるようになり、さらには達成度評価を人事評価に直結し処遇に結び付けるタイプのものへと広がっていきました。
毎年の経営計画達成に向け全社一丸となって取り組む体制を築くための仕組みですから、まず経営者や幹部社員を対象として、一人ひとりの社員が担う職制上の責任を明らかにしたうえで、自律的な取り組みができるように展開していくことが大切です。
「経営方針を会社全体に正しく浸透させるとともに、部門方針やチーム目標に沿って戦略・戦術をたて、成果達成に向けた個々人の取り組みへどうつなげていくのか。」適切な目標の連鎖に基づいた合理的な組織運営が行われることで、事業計画を着実に達成するように組織マネジメントの質を高めることが、MBOの本来のねらいだといえるでしょう。
「目標管理制度」には、以下のような効果が期待されています。
1. 企業目標と個人目標を統合することにより組織力を強化する
2.各人の自主的な取り組みにより個人の能力開発をうながす
3.業績貢献度に応じた報酬の配分を実現する
いずれも社員の自律を促し個々の能力開発や人材育成に繋がるものですが、これは目標によるマネジメント自体が、いわゆる優秀な社員の思考・行動プロセスを、組織的に取り入れるために仕組み化したものだと考えると分かりやすいでしょう。
ここでいう「優秀な社員」とは、現状に甘んずることなく課題・問題を見極め、それを解決するためにどのようにすべきかを常に考えて実行に移し、成果へと導くことのできる社員です。このような優秀社員の思考・行動パターンを仕組み化して社員全体のパワーアップを図り、より強い企業へと成長することが期待されています。
実際の運用を見ると、売上高や営業利益のような定量目標ばかりが注目されやすいのですが、「目標によるマネジメント」ですから業務プロセスも含めてマネジメントの質を見極めることが大切です。そして、上級の管理職であるほど厳格にマネジメントの質が問われなければならないことを忘れないでいただきたいと思います。
所長 大槻 幸雄