賞与支給にあたって評価を実施し、その結果を個人別の賞与金額に反映させている会社は多いことでしょう。責任等級制賃金制度では、半期ごとに社員の仕事の成績(仕事のプロセスと成果)を評価することを「成績評価」、その評価結果をSABCDの5段階で表したものを「成績評語」と呼んでいます。
成績評価は、同じ等級の社員同士を対象に相対評価で行いますので、成績評語も同じ等級の社員内での順位をもとに決定します。成績評語は、S:5%、A:20%、B:55%、C:15%、D:5%の割合を目安に配分していきます。ただ、SとDは5%と、20人に1人という非常に少ない割合ですので、1つの等級にある程度の人数がいないと出現しにくい評語です。そのため、社員数が少ない会社などではA:25%、B:55%、C:20%のABC3段階評価を基本とし、SやDは該当する社員がいる場合のみ使用するのが良いでしょう。
一方、社員数が増え、5段階評価が定着した会社からいただく意見の中に、「評語Bに含まれる社員が多く、同じ等級の評語Bの社員でも、限りなくAに近い者からCに近い者まで、同じ評語Bで一括りにするのは違和感がある」というものがあります。たしかに、評語Bの比率は55%ですので過半数の社員が含まれることになります。実際に、同じ等級の人数が多くなると、評語Bの中でもあと一歩でAだった比較的優秀な社員と、かろうじてBにとどまったというような社員が混在することになります。
このような場合、評語Bの中でも上位層の社員をB+とし、通常のBよりも高く処遇するという対応は可能です。ただし、評語Bに含まれる社員の大半は評価に大差がないので、Bの半数近くをB+にするようなことはせず、Bのうち上位10~15%程度にとどめるべきでしょう。
ところで、B+を設ける方向で検討していると、「A+やB-、C+なども作ってより細かく差をつけた方が、社員の納得感も上がるのではないか」という意見も出てきます。しかし、評語が増えれば増えるほどその境界線での判断はあいまいになりやすく、良かれと思って評語を細分化したのに、社員からは「なぜ自分はこの評語だったのか」と、納得感が上がるどころかかえって不信感を募らせる原因にもなりかねません。
とりわけ、評語AやCをさらに細かく分けることは絶対に避けるべきです。もともとの目安の比率が全体の15%~20%と少ないのに、その中を細分化すればその違いを明確に説明できなくなり、結局、感覚的・直感的な判断とならざるを得ないからです。B+を設けても良いというのはあくまでも母集団が大きいからであって、その中で惜しくもAに届かなかった社員の処遇を他の評語Bの社員より高くすることでやる気をさらに高める効果がある、と考えるからなのです。
また、「B+をつけて良いならB-も設けて、『Cの一歩手前』という危機感を社員に持たせたい」という考えも分からない訳ではありません。しかしその前にやるべきことは、評語Cとなってしまった社員に対するさらなる支援や助言、指導です。人手不足の折、一人の社員も残さず戦力化しなければ経営そのものが立ち行かなくなってしまう時代ですから、こちらの方が待ったなしです。
繰り返しになりますが、成績評語を細分化したからといって、ただちに社員の納得感が向上するものではありません。評価に対する社員の納得感を上げるには、細分化の前に、上司と部下がしっかりと向き合える関係を築くことです。
チーフコンサルタント 高橋 智之