賞与の本質は「利益の分配」です。
賞与は一定期間内における会社の利益の一部を、各社員の貢献度に応じて分配する臨時的な給与として、毎月の月例賃金とは異なる性格をもっています。月例賃金は社員の生活を支える収入であり、安定的な運用が求められますが、賞与は業績に応じてその支給額が大きく増減することがあります。つまり、賞与総額は常に会社の利益と連動して決められ、各社員への分配額はその期間中の利益に対する一人ひとりの貢献度に見合ったものとなるよう決められなければなりません。
もっとも、賞与総額は会社の利益と連動して決定され、赤字の場合には不支給もあり得るとはいっても、業績不振を理由に即座に賞与を不支給とするのは好ましいやり方ではありません。
会社業績の最終責任は経営者にあります。「会社が赤字であれば賞与はゼロ」が理屈としては正しいとしても、利益が出ていないので賞与は出せないと直ちに結論付けてしまったら、そこに賃金戦略・人事戦略は不在であり、経営者が責任を放棄したといっても過言ではありません。このような判断をすれば、会社に対する社員からの信頼は大きく失墜して社内の活力が損なわれ、稼ぎ頭である優秀な社員から退職してしまう可能性すらあります。求心力が低下すれば、当然、業績回復も遠のいてしまうでしょう。
社員の奮起を促して、今後の業績向上に繋げることも賞与支給の大きな目的の一つです。優秀な人材の流出を防ぎ、社員のやる気を維持するためにも、短期的にあるいは特定年度が赤字であっても、内部留保を取り崩すか、来期以降の利益を担保として最低限の賞与を支給するように努めてください。このときの最低保証の目安は、基本給の1カ月分です。この最低限の賞与原資は、当初から月例賃金と同じように必要経費に含めて用意をしておくべきでしょう。
もちろん、業績がいよいよ厳しくなれば賞与の不支給という判断をせざるを得ない状況もあります。それでも、優秀な社員が自社に残って、収支改善に取り組んでもらえることが望める状況にあるのなら、経営者からのメッセージを込めて、たとえ小額であっても賞与支給をすべきでしょう。
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