SABCDの5段階評価において評語CまたはDとなった社員に対して、定期昇給を一律にゼロまたはマイナスとするのは好ましいことではありません。なぜなら、正社員としての安定雇用を前提とするならば、将来への不安を緩和し成長意欲を引き出すための“励み”を与える最低限の昇給が必要だからです。
評価が低いからといって、無条件に定期昇給をゼロやマイナスにすると、生活費として最低限必要な給与水準にすら届かなくなってしまいます。その結果、「この会社では安心して働き続けられない」と不安に駆られれば、早期離職にも繋がりかねません。大器晩成型の社員もいるでしょうから、低い評語に対して一律に厳しい処遇をすることは避けるべきなのです。
ただし、励みとしての最低限の昇給をいつまでも積み上げていくと、過度の年功昇給に陥る可能性があります。そこで必要となるのが「調整年齢制度」です。
「調整年齢制度」とは、基本の昇給号数をS=6号、A=5号、B=4号、C=3号、D=2号と設定したうえで、等級別に設定された調整年齢ゾーンに応じて、昇給号数を段階的に調整していく仕組みです。
例えば、3等級(上級社員相当)の場合、次のように設定するのが標準的です。
35歳まで = 基本昇給(S:6号、A:5号、B:4号、C:3号、D:2号)
36~41歳 = 1次調整(S:5号、A:4号、B:3号、C:2号、D:1号)
42~47歳 = 2次調整(S:4号、A:3号、B:2号、C:1号、D:0号)
48~52歳 = 3次調整(S:3号、A:2号、B:1号、C:0号、D:0/-1号)
53歳以降 = 4次調整 (S:2号、A:1号、B:0号、C:0/-1号、D:0/-2号)
評語CまたはDとなった場合でも、若い社員には励みとしての昇給を与えて成長を促しながら、所定の年齢に達したら、調整年齢制度により最低保証分を段階的に外せるようにしておけば良いのです。
正社員が無期雇用であることを前提とするならば、このように長い期間にわたってインセンティブ効果が期待できる昇給制度が何より大切なのであり、評語C以下の昇給を一気にゼロにするという運用は、明らかに間違いなのです。
所員