定年後に再雇用する従業員(以下、「再雇用者」)も同一労働同一賃金のガイドラインの対象となります。そのため、再雇用時の給与決定にあたっては、定年前の給与や正社員との待遇差に注意する必要があります。
再雇用者と正社員との間に待遇差があること自体は問題になりませんが、本人から待遇差の理由を尋ねられた場合、会社は合理的な説明をしなければなりません。この点から考えると、再雇用者の給与は、実際に担当してもらう仕事内容と働き方を基準に個別決定していくのが原則であり、職務基準の等級制度や賃金テーブルが整備されていれば、次のような手順で合理的に決めることができます。
【手順1】定年後に任せる仕事内容から正社員の何等級に相当するかを判断する
本人の能力・適性を再評価した上で、今後、担当してもらう仕事の難易度や責任の重さに応じて等級を決め直します。再雇用後も定年前と全く同じ仕事を続けてもらい、社内の役割責任も変わらないのであれば、定年前と同じ等級とするのが適切でしょう。一方、定年まで管理職であった社員でも、再雇用後は役職を外れて実務担当者の仕事に就く場合は、等級が下がる可能性もあります。
【手順2】基本給はその等級に在籍する正社員とのバランスを考えて決定する
例えば、再雇用者に4等級相当の仕事をしてもらう場合、現に4等級に在籍している正社員と比較しながら、妥当と思われる金額を個別に検討していきます。この時、再雇用後の基本給が4等級の賃金テーブルの範囲内に収まるように決めておけば、仮に定年前より金額が下がったとしても、仕事内容に見合う適切な水準であると説明することが可能になります。
「60歳到達時の○○%」といった決め方をしていると、基本給が相当する等級の最低額を下回ってしまうこともあります。引き下げ率を一律に決めている場合には、正社員とのバランスを欠いた金額になっていないかを確認する必要があります。
【手順3】仕事に関連する手当は正社員と同一基準で支払うのが基本
役職手当や資格手当など仕事に直接関連する手当については、同一労働同一賃金のガイドラインに沿って、正社員と同一基準での支給が基本となります。再雇用後の労働条件や仕事内容によっては個人別に金額を変えることもできますが、後で合理的な説明ができるように相応の根拠をもって決めておく必要があります。
再雇用した翌年以降の給与については、毎年の契約更新時に実際の担当職務に合わせて相当する等級や金額を見直していくことになります。この際、正社員と同様に成績評価を行い、通常の昇給ルールに沿った給与改定を実施しても良いでしょう。年2回の成績評価の結果が契約更新時の給与改定に反映されれば、再雇用後も緊張感を保って仕事に取り組んでもらえますし、モチベーションも高く維持することができます。
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