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「いまだに多く見られる時間外勤務手当の支給における誤った取扱い」

 労働基準法の改正により時間外労働に上限が設けられ、現在は企業規模にかかわらず、原則として月45時間・年360時間までとなりました。そして、これまで例外として適用を猶予されていた建設業や自動車運転の業務、医師、鹿児島県および沖縄県の砂糖製造業も、今年4月からは上限規制が適用開始となります(一部、特例付きの適用もあります)。このような背景もあってでしょうか、最近、時間外勤務手当の支給に関するご相談が増えています。
 厚生労働省のガイドラインでは、使用者による労働時間の適正な把握のため、従業員の始業・終業時刻を確認、記録する方法として、原則として次のいずれかの方法によることとしています。
ア.使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること
イ.タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録
       を基礎として確認し、適正に記録すること
 その上で、時間外勤務、休日勤務、深夜勤務があった場合、割増賃金を支払わなければならないことは、皆さんご存知のとおりです。しかし、割増賃金を支給するにあたり、時間外勤務等の時間数の取扱いにおいて独自ルールで運用してしまっているケースが散見されます。
 正しい取扱いは、「原則として時間外、休日、深夜の各々の1か月における勤務時間を1分単位で集計する」ことです。その一方で、原則の方法は割増賃金の計算がかなり細かく、煩雑になることが想定されます。
 そこで例外として、「時間外勤務等の各々の時間数の『1か月における合計』に1時間未満の端数があった場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる」方法も認められています。
(例)
時間外勤務の「1か月の合計」が2時間25分 →2時間 
                     …30分未満を切り捨て
時間外勤務の「1か月の合計」が2時間31分 →3時間
                     …30分以上を1時間に切り上げ
 ここで問題となるのは、日々の時間外勤務等の労働時間を15分や30分単位等として、それ未満の端数を切り捨てているようなケースです。また、従業員に時間外勤務を申請させる際、端数時間を切り捨てるよう、会社が指示しているような場合も同様です。これらを労働基準監督署から指摘され、未払い賃金の支給を余儀なくされる会社がいまだに多いのです。
(なお、1日の労働時間単位を15分とした場合でも、15分未満をすべて切り上げる運用であれば法定以上の支給となるため、違法とはなりません。)
 
 このような運用を行ってしまうのは、「残業代の支給をできるだけ抑制したい」、「(採用場面において)応募者から残業の多い会社と思われたくない」等の理由からなのかもしれません。しかし、ムリ・ムダ・ムラを省くことは、会社全体の生産性向上に直結します。
 法令の順守・徹底も含め、会社は研修等を通じて、管理職のマネジメント能力向上へ継続的に取り組んでいただきたいと思います。
チーフコンサルタント 高橋 智之

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