今回のコラムでは、効果的な個人目標設定の方法について考えてみましょう。目標管理制度(Management By
Objectives)を導入して、個人目標を勤務成績に直結させるケースだけでなく、他の評価手法を用いる場合でも、社員のモチベーションを高め、公正かつ透明で納得感のある評価を実現するためには、社員に適正な目標を持たせることが重要です。
一般的によく言われるのが、「SMART」を意識した目標設定です。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字を取ったもので、これにより目標が明確になり、達成度の評価が容易になります。
よく「営業職は、業績目標が数値化されるので、実際の成果を勤務成績に反映させやすいが、管理部門や事務職では定性的な目標が中心であり勤務成績に差を付けにくい」という意見が寄せられます。本当にそうでしょうか。実際のところ、営業職だからといって納得感のある評価結果が導き出せるわけではありません。目標設定時に、個々の目標の達成基準、難易度の見極め、目標相互のウエイト付けをしっかり意識して、適正な目標設定を行う必要があります。
まず、達成基準について考えてみましょう。SMARTのうち、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)がポイントです。さらに、ストレッチな目標、すなわち現時点での個人の実力を上回るものの努力を重ねれば手が届く(Achievable;達成可能)水準の目標であることが求められます。
ただし、「売上1億8000万円達成」のように数値化さえしていれば良いというものではありません。現時点での実力を上回る数値目標を達成するためには、これまでとは違う行動ベースでの取り組み(アクションプラン)や工夫を具体化しなければならないのです。
次に取り上げるのは難易度です。例えば、営業職に対して売上高や粗利額を目標とする場合、どの様な商品群や顧客層を担当するかで、成果への期待値は大きく異なります。売れ筋商品を既存顧客中心に販売するルート営業であれば、相応の売上高が期待されますが、職務の難易度はそこまで高くないかもしれません。反対に、新商品・サービスで新たなシェアを取りに行くような事案であれば、目標金額の絶対額以上に難易度の高い目標であることも考えられます。ここでいう難易度は、本人にとっての難しさではなく、等級格付や期待役割を基準として判定しなければいけません。
最後に目標ごとのウエイト付けについて考えます。目標の重要度に応じてウエイトを付けることで、各目標の達成度が総合評価にどのように影響するかを明確にすることができます。例えば、目標数が4つであれば、目標Aが30%、目標Bが30%、目標Cが25%、目標Dが15%というように設定します。このウエイトは、評価者である上司の責任において決定されるべきものです。時として、達成しやすい目標項目には高いウエイトを、難易度の高い挑戦的な目標には低いウエイトを割り振って、総合評価を高めに誘導しようというケースを見受けますが、そのような恣意的なウエイト付けは目標によるマネジメントの本質を歪めますので、注意してください。
所長 大槻 幸雄