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皆さんの会社では『役職のインフレ』は起こっていませんか?

 日本では物価高騰が続き、まさにインフレ局面にありますが、企業経営において気を付けなければならないもう一つのインフレに「役職のインフレ」があります。皆さんの会社では次のような事象は起こっていないでしょうか?

 

・組織図上、部の下には1つの課しかないのに、同一部内に課長が何人も存在している

 

・ライン長としての部長や課長は組織構造に則した配置となっているが、次長や部長代理、課長代理など、職責や職務内容があまり明確でない肩書の社員が存在している

 

 このような事象が起こりやすい理由として、「昇格・昇進しないと給料が上がらない」といった制度設計上の問題や、「長年勤めているのに、役職が上がらない(役が何も付かない)のは可哀想だ」といった経営者の心情的な配慮などが挙げられます。

 

 役職のインフレが起こると、必要以上に人件費が増える(人件費の水膨れ)だけでなく、「あの人は役職者になって(昇格して)給料も上がったはずなのに、やっている仕事が以前と何ら変わっていないのはおかしい」などと、周りの社員が不満を抱く恐れもあります。また、ひどい時には、肩書のついた社員がライン長である部長や課長の指示・命令とは異なる内容を課員たちに示すなど、組織の指揮命令系統を混乱させるケースもあります。

 

 責任等級制は役割責任(職責)の大きさを基準とする等級制度であるため、「等級=職位(役職)」として、例えば6等級=部長、5等級=課長など、基本的には各等級に一つの職位が対応する関係となります。

 

 しかし、同じ役職名称であっても異なる等級に格付けするケースもあります。金融機関の事例がイメージしやすいと思いますが、同じ支店長という役職でも、本店等の基幹店舗における支店長と規模の小さい店舗の支店長とでは決裁権限の範囲や在籍する職員の数などに違いがあることから、基幹店の支店長は5等

級、その他の支店長は4等級などと等級格付けにも違いを設ける場合があります。もちろん、「どちらも支店長に変わりはないのだから、同一等級で格付けすべきだ」とする考えもありますが、現に同じ役職名であっても決裁権限やマネジメントの範囲に明確な違いがあるのですから、むしろ責任等級制の根本的な考えに則った等級格付けを行っていると言えるかもしれません。ただし、このような考えにより同一の役職でも等級格付けが異なっている旨は、きちんと職員に説明し、理解を促す必要があるでしょう。

 

 役職のインフレは、どの等級制度を採用していても、運用次第でどこの会社でも起こり得る問題です。この4月に昇格昇進を行ったばかりという会社は多いと思いますが、「処遇のための身分資格化した役職者はいないか(そのような昇格昇進運用がなされていないか)」、来年度に向けて今のうちから確認していただきたいと思います。

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