03-3953-6761

フィードバックができない背景を探る

 経営者や人事担当者から寄せられる悩みの一つに、評価後のフィードバックができていない、というものがあります。「うちのマネジャーたちは評価をするだけで手一杯で、フィードバックは全くできていない」、「フィードバックをやっている人とやっていない人が混在している」など、程度に差はあれども、私の肌感覚ではできていない会社の方が多いように感じます。では一体なぜ、フィードバックができないのでしょうか。

 

1.そもそも部下の仕事ぶりを観察することができていない

 

 評価者がプレーヤーとしての役回りも大きく期待されていることもあって、「部下の仕事ぶりまで観察する余裕がない」ということです。しかし、部下の仕事ぶりを観ることができていないとすれば、フィードバックの実行以前に、評価そのものが適切に行なわれているのかどうかも疑わしくなってきます。この場合、まずは部下の観察と記録を評価者に定着させなければなりません。

 

2.「フィードバックしなくても部下は分かってくれている」という思い込み

 

 上司と部下の間で日々コミュニケーションが密に取れており、言葉どおり、フィードバックの時間を設けなくても部下が理解しているのであれば、それは大変素晴らしいことです。しかし、親子でさえ話をしなければお互いに考えていることなど完全には分からないのに、他人同士の上司と部下で果たしてどこまで通じ合えているのでしょうか。このような思いを口実に、多忙からフィードバック面接を後回しにしてしまっている…というのが実情かもしれません。

 部下観察が実行できているのであれば、あとはていねいにフィードバックを行うだけです。あらかじめフィードバック面接までスケジュールに組み入れることで解決します。すでに部下との間で信頼関係が築けていたとしても、時間を設けてきちんとフィードバックすることは決して無駄ではなく、信頼関係をさらに深める上で役立つはずです。

 

3.部下から評語(評価結果)について説明を求められても答えられないから

 

 評価者が採点した後、評語が決定するまで、評価者や調整者(人事考課であれば2次、3次評価者など)、評語決定者の間で意見交換や情報共有を行っているという会社はあまり多くないと感じます。例えば部下の評語について、評価者は評語Aだと思っていたのに、会社が決定した評語はBだった場合、評語決定者から評価者へ何も説明がなければ評価者自身が納得できないままフィードバックに臨むことになります。この状態で部下から説明を求められても答えられず、その結果、評価者、部下ともに評価への不満を溜めてしまい、フィー

ドバックをためらう(避ける)悪循環に陥るのです。

 これを解消するには、評語決定前までは「なぜ、この評価(採点)となったのか」を確認・議論し、評語決定後は「どうして、この評語となったのか」、フィードバックを行う評価者が理解・納得できるよう説明を尽くすしかありません。

 

 評価において最も重要なのは「納得感を得られるか」です。被評価者である部下はもちろんのこと、評価結果をフィードバックする評価者も納得していなければ適切な運用など望めません。皆さんの会社でも思い当たる背景(原因)を浮き彫りにし、納得感のある評価運用を目指していただきたいと思います。