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資格取得の支援策を採用・定着、能力開発に有効活用する

 建設業や物流業、医療・福祉などの業種において従事する上で必要な公的資格や特殊免許、高度の専門知識・技能を有する人材はもとより、システム系・IT系の高度技能やスキルを持つ人材なども、業種を問わずまさに引く手あまたの状況です。このような人材は総じて賃金相場も高く、採用を考えている企業は資格手当(特技手当)の支給により処遇を引上げて対応するケースが多いです。

 

 ちなみに、各種資格に対する平均的な手当額もよく質問を受けるのですが、資格手当に関する調査・アンケートはあまり多く実施されていないのが実状です。各企業は基本給や他の手当とのバランスも加味しながら資格手当を支給しており、とりわけ人手不足感の強い職種になると高額な手当支給を行う企業も存在するため、調査の集計数が極端に少ないような場合には集計結果に注意する必要があります。

 

 なお、技術・スキルの進歩が速い職種などは、企業が求める内容やレベル等もどんどん変わるため、直近の相場を知りたい場合には、採用媒体に掲載されている様々な企業の募集要項から支給内容を収集するのが最も確実で、新鮮な情報を手に入れられます。

 

 また、有資格者の採用を行うだけでは間に合わず、未経験者を採用し、入社後に教育・研修を行うことで有資格者に育成している企業も少なくありません。この場合、資格取得にかかる通信教育(eラーニング)費用や書籍代、受験料などを会社が負担し、晴れて資格を取得した時は合格祝い金(一時金)を支給する、という支援方法が主流です。この場合、毎月の資格手当は支給しない企業がほとんどですが、最近は少しでも人材獲得競争で優位に立てるよう、取得費用の会社負担、合格祝い金に加えて毎月の手当も支給する企業が増えているように感じます。

 

 ところで、資格手当を毎月支給する場合は「職務遂行上、必要なものに限って支給する」のが原則です。資格は持っていても、人事異動等により資格を活用する仕事から離れる場合は、資格手当も不支給とします。このとき、給与規程で明文化することも忘れずに行ってください。

 

 資格取得の支援は採用の場面だけでなく、既存社員の能力開発・自己啓発においても社員にキャリアパスを示せるようになり、人材の定着・育成、そして生産性向上へと繋げることができます。しかしながら、日本企業では「教育・研修」の優先順位が必ずしも高い状況にあるとは言えません。とはいえ、働ける人の数が今後ますます減少することが確実である以上、一人ひとりの能力を上げない限り、事業の継続・発展は望めません。

 

 特に、昨今の若手社員は会社に期待する要素として「自分が成長できる職場や環境」を重視する傾向にあります。自己成長を通じて働きがいを得たいという社員の思いと、会社が目指す未来とベクトルを合わせて、確かな発展へと繋げていきましょう。