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今年の年末調整により配偶者手当が追加支給となる可能性にご注意ください

 「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等」により、配偶者控除の対象となる配偶者の年収上限が103万円以下から123万円以下に引き上げられました(収入が給与のみの場合)。これを受けて、皆さんの会社でも今年の年末調整で対応されたことでしょう。このとき、年末調整そのものは給与ソフト等で改正内容が自動的に適用されたものと思いますが、家族手当の支給要件を「所得税法上の扶養親族」と定め、配偶者にも手当を支給している会社では、年末調整の結果次第で新たに配偶者手当の支給対象となる社員が生じる可能性があるため、注意が必要です。

 

 ここで、あらためて企業における家族手当の支給状況を確認してみましょう。

 

 人事院「令和6年職種別民間給与実態調査」によると、家族手当制度がある企業は全回答企業の74.5%を占め、そのうち配偶者に手当を支給する企業は71.8%に上ります。この配偶者に手当を支給する企業のうち、配偶者の収入による制限がある企業は88.0%と大半を占めています。この収入による制限がある企業を100とした場合、収入制限額103万円の企業が43.4%、130万円の企業が34.4%と、所得税法上の扶養親族を支給要件とする企業の方が、健康保険上の被扶養者を支給要件とする企業よりも割合が高くなっている状況です。

 

 さて、所得税法上の扶養親族を家族手当の支給要件としている会社に話を戻すと、給与規程に「配偶者は給与による年収が103万円以下であること」などと条文に金額まで規定してあれば良いのですが、そこまで明確に規定化している会社は滅多にありません。したがって、「所得税法上の扶養親族」とだけ規定している場合、配偶者手当については今年の税制改正による123万円が支給要件となります。その結果、新たに支給対象となる社員が生じる可能性があり、配偶者手当を遡って支給することも必要になってきます。このように、家族手当の支給要件を所得税法上の扶養親族と定めた場合、年末調整を待たないと支給対象となるか否かの最終的な見極めができず、運用が困難となりやすい側面があります。

 

 現時点でも、政府内で基礎控除や給与所得控除の見直し議論を行っていることを鑑みれば、家族手当の支給要件を健康保険上の被扶養者に変更することをお勧めします。健康保険を支給要件とすれば、配偶者や子どもが自身の勤め先の健康保険に加入する等、異動がある時点で確実に状況を把握できるため、家族手当の支給も遅滞なく見直すことができて便宜です。

 

 今年の年末調整では、自動車や自転車などの交通用具を使用している社員の通勤手当の非課税限度額も改正されるなど、例年以上に処理に手間がかかって大変だったことと思います。それに加えて、このような税制改正に伴う意外な落とし穴まで生じる恐れもありますので、最後まで気を付けて手続きをしていただけたらと思います。