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ベア検討の前に、社員間のバランス確認と必要に応じた是正を行いましょう

 昨年、一昨年と2年連続で5%超の賃上げとなりましたが、依然として実質賃金がマイナスであることから、連合は今年も全体で5%以上、中小企業は格差是正分1%を含めた6%以上の賃上げを要求することとしました。

 

 対する経営者側は、懸念された米国の関税政策の影響が当初の想定よりも限定的となり、2026年3月期決算も増益が見込まれていることから、大手企業は今年も5%超の賃上げが視野に入ってくるでしょう。一方、中小企業は価格転嫁が進まず、収益改善による賃上げ原資の確保が年々困難となっている企業も少なくないことから、賃上げへの対応はこれまで以上に分かれる可能性があります。

 

 ところで、「ベースアップを行う際は、先に定期昇給を行ってから」という順序が大原則ですが、この定期昇給を行った後、皆さんの会社では「社員間のバランス確認・是正」を行っていますでしょうか。

 

 社員間のバランスを見る際は、社員の給与をグラフ上にプロットするのですが、このとき、基本給を用いて比較すると良いでしょう。基本給は全員に共通する支給項目であり、意図的に粉飾することもできないため、ストレートに社員間の関係性を浮かび上がらせてくれます。なお、責任等級制度では、グラフの縦軸に基本給の号数、横軸に年齢を置き、様々なモデル昇給線を描いた標準昇給図表というツールにより、各等級における社員間のバランスをたちどころに可視化することができます。

 

 実際に社員をプロットしてみると、「Aさんはよく仕事をしてくれているのに周りと比べるとずいぶん低いなあ」、「BさんはどうしてCさんよりも高い位置にいるのだろう」など、これまで見えていなかった「ゆがみ」や「いびつ」が見えてきます。とりわけ中途採用が多い会社の場合、未経験だからといって低めの金額で採用するケースが多く、入社後、成果を上げて貢献度の高い社員であっても相対的に給与が低いまま推移してしまいがちです。

 

 バランスを確認した結果、もっと給与を引き上げるべき社員を見出したら、ルール通りの定期昇給に加えて特別昇給を行い、バランスを是正します。なお、かい離の大きさ次第では、一回の特別昇給では是正しきれないこともあります。その場合は3年程度かけて是正するようにします。

 

 このように、特別昇給は定期昇給に伴い、是正が必要な社員に限って引き上げを行うことから、全員に同一条件を適用して賃金水準を引き上げるベアとは考え方も手法も異なるものです。

 

 「5%を超える賃上げ」というフレーズを耳にすると、労使ともにまず手厚いベアの実施に意識が向かうのは当然のことであり、可能であれば実行してほしいことに違いありません。しかし、立ち止まって考えてみると、社員にとってのライバル・比較対象とは、「目に見えない世間水準」である前に「目の前にいる同僚」のはずです。もしそうであるならば、ベア実施の前に社員間のバランス是正を行った方が、社員の納得感はより得やすいのではないでしょうか。そして是正後に5%超の賃上げを目指した方が、経営者としてもより納得感が高く、結果的にベア原資も抑えることができるものと考えます。

 

 今まさに、多くの中小企業経営者が「賃上げの期待に応え、社員の生活水準を少しでも引き上げてあげたい」という心情と、苦心して賃上げ原資を捻出しなければならない実情との板挟みになっていることと思います。限りある原資を有効に活用するためにも、今年はぜひ、ルール通りの定期昇給が終わりましたら、社員間のバランスを確認してみてください。