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賃上げに向けて、トップの“覚悟と未来図”を言葉で伝えよう

 2月に入り、皆さまの会社でも春の賃金改定に向けた検討が本格化している頃かと思います。昨年から続く物価上昇は依然として高止まりし、エネルギー・物流コストも緩やかな上昇が続く見通しです。一方で、人手不足は深刻化し、採用難は多くの中小企業にとって避けて通れない課題となっています。

 

 こうした環境下で、今年の賃上げは昨年以上に重要な意味を持ちます。大手企業は5%超の賃上げを打ち出す見通しで、社会全体として「賃上げを続ける」方向性が共有されつつあります。しかし、読者の皆さまにとっては、価格転嫁が十分に進まない中で原資をどう確保するかという現実的な悩みがつきまとっているはずです。

 

  「うちは厳しいから世間並みのベアは難しい」

  「とはいえ、賃上げをしなければ人が定着しない」

 

この“言葉にならない葛藤”は、多くの中小企業が抱えているものです。

 

 しかし、だからこそ今年の賃上げについては、数字だけで語るべきではありません。

 

 社員が本当に知りたいのは、額や率そのもの以上に、「会社は自分たちの生活をどう考えているのか」という経営者の姿勢だからです。

 

 たとえ世間並み以下の上げ幅であっても、

 

  「今年はこういう考えで賃上げに取り組む」

  「来年・再来年はこういう形で改善していく」

 

と、社長ご自身の言葉で語っていただくことが重要なのです。

 

 中小企業では、トップの言葉が組織の方向性を決めます。社員にとっても“そういう流れにある”という話ではなく、経営者の意思として受け止められます。だからこそ、賃上げの方針を語るとき、単なる給与改定の話ではなく、「この会社で成長してほしい」というメッセージとして、社員に伝えなければならないのです。

 

 とりわけ若手社員には、社長の想いは“伝えなければ伝わらない”ものです。会社の未来を担う人材にこそ、経営者の覚悟と未来図を、言葉としてしっかり届けていただきたいのです。

 

人材育成の視点を、賃上げの中心に据えるべき理由

 

 もう一つ、共有しておきたい視点があります。

 

 人を育てて生産性を上げられない会社は、いずれ人材という源泉が枯渇するということ。逆に、人手が揃っていても世間並みの給与が払えないビジネスモデルでは、長期的には持続しえないのです。これは厳しい現実ですが、避けて通れない前提です。

 

 ただし、ここで大切なのは「不安に押し流されること」ではありません。どんな未来をつくりたいのかを、経営者自身が言葉にすることです。設備投資が“先行投資”であるように、社員のやる気に火をつける賃上げも、立派な“人的投資”です。

 

 社員が育ち、生産性が上がり、その成果が次の賃上げ原資を生む。この循環をつくることこそ、私たちが目指すべき姿です。賃上げは「給与改定」ではなく、「人を育てる仕組みづくり」そのものだと捉えていただきたいと思います。

 

春季労使交渉の本番を迎える今こそ、社長の言葉が必要です

 

 春季労使交渉が本格化するこの時期、賃上げへの向き合い方を曖昧にしておくことはできません。いま求められているのは、社長自身が「今年はどう取り組むのか」を明確に示す姿勢です。

 

 特に若手社員には、会社の将来像や社長の想いは、言葉として届けてこそ伝わります。賃上げの方針は、単なる給与改定ではなく、「この会社で成長してほしい」というメッセージそのもの。だからこそ、社長が自ら語り切る必要があるのです。

 

 今年の賃上げ方針をどう描き、どう伝えるか。これは、いま避けて通れない経営課題です。私たちも、お客様の賃金政策がより良い形となるよう、引き続き全力でサポートしてまいります。

所長 大槻 幸雄