連日のように大卒採用初任給の大幅引き上げが新聞・テレビ等で取り上げられ、注目を集めています。ここで、報道のあった企業名と初任給額をいくつかご紹介してみましょう。
ファーストリテイリング:370,000円
ノジマ:344,000円
※同社でアルバイト経験が1年以上あり、一定以上の成果が認められ
た場合は400,000万円(名付けて「出る杭入社」)
松屋フードホールディングス:270,000円
アシックス:330,000円
第一生命ホールディングス:354,000円(固定残業手当を含む)
など(敬称略)
毎年、初任給大幅引き上げの報道が出ると、経営者や人事担当者の皆さんから「わが社も30万円まで引き上げたいのだが、先輩社員まで大幅な引き上げとなっては人件費が増え過ぎて困る。既存社員の賃上げは抑制(できることなら賃上げゼロ)しつつ、採用初任給を大幅に引き上げるにはどうしたらよいか?」といったご相談が寄せられます。
しかし、ここで名前があがったような企業では、ほぼ間違いなく既存社員も相応な賃上げが行われており、新卒社員だけが高い給与で処遇されるということは、まずありません。とはいえ、このままでは会社全体の人件費が大幅に増えることになってしまう訳ですが、大手企業の場合、不採算部門の売却や希望退職者の募集など、組織の再構築をあわせて行うことによって「総額人件費の見直し(人件費の再配分)」を選択することができます。ここが、幅広い事業領域と人的資源を有する大手企業と、人材の確保・定着に苦心し、一人として貴重な戦力を欠くことのできない中小企業との決定的な違いなのです。もちろん、中小企業でも高い成長力のもと、高収益を上げ続けることで魅力ある初任給額を提示できる企業も存在しますが、ごく一握りに限られているのが現状です。したがって、総額人件費の抜本的な見直しや高い収益力といった原資の裏
付けがないまま闇雲に採用初任給の大幅引き上げに追従することは、命取りとなりかねません。
では、地に足のついた採用初任給の設定を行うためにも、大卒初任給に関する調査データをご紹介します。
全国平均 235,367円(人事院「令和7年職種別民間給与実態調査」)
調査平均 239,280円(産労総合研究所「2025年度決定初任給調査」)
全規模計 238,152円(連合「2025年春季生活闘争」)
冒頭でご紹介した採用初任給に比べると皆さんに身近な金額となっており、少し気持ちも落ち着いたのではないでしょうか。ただし、いずれの初任給も前年度からは10,000~12,000円程度引き上げられており、引き上げ幅そのものは決して小さくないことは申し添えておきます。
今まさに、既存社員の今年度の賃上げを検討している企業も多いことでしょう。その賃上げ額をベースにしながら、貴社の採用初任給額を着実に設定していただきたいと思います。
チーフコンサルタント 髙橋 智之