管理職の重要な役割の一つに、部下に対する評価があります。しかし、経営サイドや総務部門から評価シートが送られてくるときに、「忙しいけど、業務だから仕方ないな」というネガティブな捉え方をする評価者も少なからずいるようです。しかし、現在の職位に評価権限が与えられているということは、責任と信頼の証でもあります。ここでは、公正な人事評価に臨むための評価者の心構えについて考えてみましょう。
評価の目的とは
人事評価は単なる業務の一環などではなく、部下の成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための重要な取り組みの1つです。評価を通じて、部下の強みや改善点を明確にし、適切なフィードバックを通じて彼らのモチベーションを高めることができるのです。
公正さと透明性を保つ
評価における公正さと透明性は、部下の信頼を得るために欠かせません。評価基準を明確にし、全員に対して一貫した基準で評価を行うことが基本です。また、評価のプロセスや結果についても、部下に対してオープンに説明できる体制づくりが重要です。
フィードバックの質を高める
評価はフィードバックとセットで行う必要があります。具体的で、建設的なフィードバックをすることで、部下は自分の強みを伸ばし、ブラッシュアップに取り組むことができます。フィードバックとは、単に評価結果を伝えるためだけでなく、今後の努力の方向性を示し、部下の成長をサポートするための重要なコミュニケーションの場なのです。
評価者にとっても成長の機会
人事評価の実施を通して、管理職も自身の成長を実感できることでしょう。部下の働きぶりを正しく評価するためには、自身の観察力や判断力を常に磨く努力が必要です。また、評価を通じて部下との信頼関係を深めることができれば、チーム全体の結束力も高まるのです。
育成責任を果たす
評価権限と部下の育成責任は表裏一体のものです。管理職は部下の現状を正しく把握し、日頃からどのように人材育成や能力開発を図るかをしっかり考える必要があります。部下育成はその場しのぎではなく、個々の能力や特性を見極め中長期的な視点で行わなければなりません。効果的な仕事の与え方や進捗管理、業務フォロー、状況に応じた支援・サポートにも配慮しなければなりません。
計画的な部下育成を
日頃の業務活動では、目先の業績や成果の追及ばかりに目が向かいがちですが、計画的な部下育成を後回しにしてはいけません。管理職は部下の成長を長期的に見据え、計画的に育成する意識を持つことが求められます。自社の管理職には部下の成長が組織全体の発展につながることを理解させ、意識の転換を図りましょう。
以上のように、公正な人事評価の実践は管理職の責務の最たるものであり、部下の成長と組織の発展に直結するものです。評価を単なる定例業務として捉えることなく、部下との信頼関係を築き、彼らの成長をサポートするための貴重な機会であることを常に意識できるようにしてほしいものです。
所長 大槻 幸雄