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「中小企業にこそ重要な非正社員の処遇改善」

 連合の第5回回答集計によると、正社員の賃上げは規模計16,749円・5.32%(昨年同期比1,133円増・0.15ポイント増)でした(加重平均、以下同じ)。規模別にみると、300人以上は17,145円・5.36%(同1,116円増・0.14ポイント増)、300人未満は13,097円・4.93%(同1,208円増・0.27ポイント増)と大手・中堅の方がやや高いものの、規模間格差の是正に向け、中小も高い水準での妥結となっています。
 正社員以外の有期・短時間・契約等労働者の賃上げでは、時給で68.48円・5.93%(同2.76円増・0.09ポイント減)と昨年同時期の金額を上回り、また、正社員の賃上げ率も上回っています。小売業や飲食・サービス業などは有期・短時間・契約等のいわゆる非正社員が現場で中核となって活躍しているため、非正社員の処遇改善は今後の事業展開にも影響する重要課題となっています。
 その一方で、「賃上げは正社員のみ行えば良く、非正社員は最低賃金の改定時に検討すれば十分だ」と考えている経営者や人事担当者が意外と多くいらっしゃると感じます。非正社員は1~2年程度で必ず契約満了にしている会社ならいざ知らず、5年、10年と契約を更新し続けているベテラン非正社員がいるのに、賃金は最低賃金の改定しか行っていないという会社は思いのほか少なくありません。このような会社が新たに非正社員を採用したとき、ベテラン非正社員との時給に差がないことから、ベテラン非正社員が不満を募らせてしまい、最悪の場合、離職に繋がってしまうのです。
 正社員に限らず、非正社員の採用も一筋縄ではいかなくなった今、非正社員の定着・戦力化は重要なテーマです。先に挙げた小売業や飲食・サービス業などでは、非正社員は正社員の補助業務を行ってもらえばよいというのではなく、責任と権限を与え、売り場やバックヤードで働く人々を取りまとめて指示・命令するといった基幹業務を任されているケースも珍しくありません。そして、そのような経験を積んだ優秀な人材を積極的に正社員登用することで組織に活力を与え、強化へと繋げています。
 「非正社員から正社員への登用は、わが社でもすでに実施している」という企業もいらっしゃることでしょう。しかし、しっかりとした見極めを行うことなく、2~3カ月働いた様子や何となく感じた人柄の良さなど、あいまいな根拠をもとに正社員登用した結果、1年ともたずに退職されてしまった、というような残念なお話もよく聞きます。
 非正社員においても、良い人材を確保・定着するためには、日々の仕事ぶりを判断する評価制度をはじめ、評価に基づく賞与、昇給、昇格昇進の仕組みが必要です。また、採用相場や最低賃金の上昇、物価の高騰といった要因への対応として、ベースアップも実施しなければなりません。つまり、正社員と同様、非正社員にも処遇決定の運用ルールが必要だということです。また、これは正社員登用を前提とする場合に限らず、非正社員のまま雇用し続けるとしても、人材の定着・育成において必要な施策なのです。
 多くの企業は、正社員の処遇改善を最優先課題として取り組んでいると思います。しかし、中小企業においては、あらゆる人材を活用しなければ事業運営にも支障をきたしかねません。教育・研修も含め、非正社員の処遇改善にぜひ取り組んでいただきたいと思います。
チーフコンサルタント 高橋 智之

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