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男女雇用機会均等法施行40年の現在地 ── 企業文化と役割設計の再構築へ ──

 1986年4月に施行された男女雇用機会均等法は、度重なる改正を経て、企業の人事管理に大きな変革を迫りつつ、今日に至っています。法制定当初は、性別を理由とした差別的取り扱いが禁じられたことで、それ以前の「男性は幹部候補、女性は事務」という暗黙の前提をそのまま維持することが出来なくなり、多くの企業が総合職・一般職のコース別管理へと移行しました。これは、均等法の理念を踏まえつつ、自社の人材活用の枠組みを現実的に再構築するための対応策でもありました。

 

 しかし同法施行から40年を経た現在、この区分は当時とは異なる意味合いを帯びています。IT技術の発展による業務の高度化・多様化、専門性の細分化、そして若年層の転勤回避志向の高まりなどにより、総合職であっても全国転勤によるキャリア形成を前提としない働き方が増えています。一方で、一般職であっても高度な業務を担うケースが珍しくなくなり、結果として総合職と一般職の境界は曖昧になりつつあります。かつては「総合職は将来の幹部候補として競争にさらされ、一般職は限定的な業務にとどまる」という暗黙の了解があったかもしれませんが、今日の実際の働き方とは大きく乖離しているようです。

 

 一方で、社員側の価値観も多様化しています。責任ある仕事に挑戦したいと考える女性社員は確実に増えているものの、同時に「一定の範囲で働きたい」というニーズも根強く、一般職志望が依然として多い企業も少なくありません。つまり、企業は「女性活躍」を単一の方向性として捉えることができず、多様なキャリア観と働き方の希望に向き合う必要があるということです。

 

 こうした状況を踏まえると、均等法40年は単なる制度の節目ではなく、企業が自社の人材戦略と組織文化を再点検する契機と捉えるべきではないでしょうか。特に中小企業では、採用難が年々深刻化する中で、女性社員の活躍の場をいかに広げるかが、自社の競争力に直結すると考えられます。

 

 そこで重要となるのは、次の三点です。

 

【役割基準の明確化と評価の透明性】

 「総合職/一般職」という枠組みよりも、どの役割にどの能力が必要で、どの水準を満たせば次のステップに進めるのかを明確にすることが、公正な運用と人材育成の基盤になります。

 

【管理職のマネジメント力の再定義】

 多様な働き方が広がる中で、成果で評価する仕組み、心理的安全性を確保するコミュニケーション、ハラスメントを未然に防ぐ風土づくりは、管理職の重要な役割です。女性活躍の成否は、制度の在り方以上にマネジメント力を備えた管理職の育成にかかっています。

 

【多様なキャリア志向を前提とした配置・育成】

 「責任ある仕事に挑戦したい人」と「一定の範囲で働きたい人」が混在するのが現代の職場です。複線的なキャリアパスを整備し、本人の希望と組織の役割を丁寧にすり合わせることが、中小企業にとって現実的かつ効果的なアプローチとなるでしょう。

 

 均等法が掲げた理念は、40年を経て「女性の保護」を重視する立場から「誰もが能力を発揮できる組織づくり」へとシフトしました。人口減少が進むこれからの時代、性別にかかわらず多様な人材が活躍できる環境を整えることこそ、企業の持続的成長を支える基盤となるはずです。

所長 大槻 幸雄