2019年の働き方改革関連法により時間外労働の上限規制が設けられるなど、長時間労働の抑制に向けた取り組みが企業に求められるようになりました。その後、5年後見直し規定により労働基準法(以下、「労基法」)改正の検討が進み、2025年1月に厚生労働省は「労働基準関係法制研究会」報告書で労働時間法制の見直しの方向性を公表しました。今年に入っても、高市総理が施政方針演説で「柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進める」と述べており、約40年ぶりの労基法改正に向けて今後も議論が進められる予定です。
さて、法改正のポイントについては別の機会にお話ししますが、今後の法改正に適切に対応するためにも、あらためて「労働時間」とは何か、確認したいと思います。
労基法 第32条に労働時間の条文がありますが、1日8時間、1週40時間までという原則と、その例外である変形労働時間制について規定されているだけで、「実際にどのような時間が労働時間に該当するのか」という概念や考え方までは記されていません。
実は、労働時間の概念は、過去の判例で「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と示されたものが基準となっています。さらには、「労働時間であるか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」とも述べています。つまり、就業規則で始業時刻が8時00分と定められていても、上司から「明日は7時30分から仕事を開始するように」と指示命令された場合は、7時30分から労働時間としてカウントしなければならないということです。
このように、労働時間か否かを判断するポイントは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」に尽きます。
また、労働時間という用語には、3つの似たようなものが存在します。1つ目は、前述の「1日8時間、1週40時間まで」と労基法で定められた時間で、文字通り法定労働時間です。2つ目は「就業規則等で労働者が契約上、労働すべき時間として定められた時間」を所定労働時間と呼び、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた時間を指します。そして3つ目は、実際に働いた時間のことを実労働時間と呼びます。実労働時間は、所定労働時間から遅刻・早退等で使用者の指揮命令下から外れて働かなかった時間を控除し、時間外労働時間を加えたものを指します。この実労働時間こそが、労基法における労働時間の概念となります。
いかがでしたでしょうか。人事・総務・労務の仕事に長く携わっている方でも、「これって労働時間になるのだろうか…??」と判断に迷い、悩む場面はあるものです。そのようなときは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれていた時間であったか否か」という基準に立ち返り、判断を下していただければと思います。
チーフコンサルタント 髙橋 智之